以下は東工大附属高研究開発時のホームページ掲載の記録から再掲載しました。
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雪国の朝(自宅付近で)
「私の読書」のページです。
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2/27「8 最も長く購読している雑誌・日経BPから未来情報の紹介」
SSHとSGHの研究開発の内容を考えるために読んだ本の紹介コーナーです。検討項目ごとに随時紹介していきます。何かの参考になれば幸いです。著書の日付は私の読書時期です。
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目 次 |
1 「研究開発にリベラルアーツを取り入れてはどうか」・・・【SGH】松田先生の発言から
2 「反知性主義」・・・【SGH】グローバルな人材に求められる知性について考えてみました。
3 一般に報じられている「SDG's」の受け止めが様々であると感じていたので、様々な主張を調べてみました。
4 研究開発のこれからの方向性を考えるための、頭の柔軟体操と思考のトレーニングのための読書。
5 ウィトゲンシュタインにはまってしまいました。Yale大学の「若い読者のための・・・」シリーズはすばらしい。
6 Yale大学の「若い読者のための・・・」シリーズはすばらしい。
7 SGHの会議で「地政学リスク」の定義が議論になり図書館で本を借りて読んでみました。
8 最も長く購読している雑誌・日経BPから未来情報の紹介
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1 「研究開発にリベラルアーツを取り入れてはどうか」・・・【SGH】松田先生の発言から
1 「研究開発にリベラルアーツを取り入れてはどうか」・・・【SGH】松田先生の発言から |
①リベラルアーツの学び方、2016.12月、瀬木比呂志。
②社会人のリベラルアーツ、2017.1月、麻生川静男。
③リベラルとは何か、2021.2月、田中拓通。
⇒いずれも、英国パブリックスクールや英語圏大学で育成されている一流の教養と比較し、私が理解している認識や範囲、レベルの点で本質的な違いを感じ、その後、ウィトゲンシュタインなどの哲学的思考の方法の学習に変わって行った。
2 「反知性主義」・・・【SGH】グローバルな人材に求められる知性について考えてみました。
2 「反知性主義」・・・【SGH】グローバルな人材に求められる知性について考えてみました。 |
①反知性主義に陥らないための70冊、2016.11月、文藝春秋。
②超・反知性主義入門、2016.11月、小田嶋隆。
③反知性主義、2016.12月、森本あんり。
④アメリカの反知性主義、2016.12月、リチャード・ホーフスタッター、田村哲夫訳(確か、キャリア部会長)
⑤日本の反知性主義、2019.1月、内田樹編。
⇒④以外は個人的見解やコラムニスト的な構成になっていて、SGHで議論されている”生徒が身に着けるべき資質・能力”の議論には、知見は得られなかった。
⇒④は中教審キャリア教育部会長も務めた田村氏の翻訳で、2003年発行でやや古いかなと思いましたが、著者の反知性主義への議論のアプローチの方法や整理の仕方が分かりやすく、本質的な問いかけと著者の主張と願いが読み取れる優れモノと感じました。
⇒序論で”現代の反知性主義と知性の不人気”を論じ、その後、”心情の宗教”、”民主主義の政治”では専門職の興隆を指摘し、”実用的な文化”では実用的な文化に関心が向いていること、”民主主義の国の教育”と続き、結論で”知識人 体制順応”を論じています。
⇒先に紹介したリベラルの読書は考えなくなった自称・知識人にならないための西側文化人(もう、かつての文化人かもしれません)育成のメカニズムがどのように現代に継承されているか知りたかったためのものです。
3 一般に報じられている「SDG's」の受け止めが様々であると感じていたので、様々な主張を調べてみました。
3 一般に報じられている「SDG's」の受け止めが様々であると感じていたので、様々な主張を調べてみました。 |
①SDGs時代の教育、2019.5月、北村ら編
②ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書、2019.6月、足達ら編
③ESG/SDGs入門、2019.11月、大森充著
④未来の授業私たちのSDGs研究BOOK、2020.3月、佐藤真久監修
⑤最新SDGsの手法とツールがよ~くわかる本、2020.9月、天沼ら編
⇒UNDPのホームページにSDG'sの詳細があります。またUNESCOのHPにもあります。17のゴールと精神が述べられていますが、上記の著作では解説の範囲を出ていないように感じました。
UNDP(https://www.undp.org/content/undp/en/home/sustainable-development-goals.html)
UNESCO(https://www.unesco.or.jp/sdgs-assist/about-sdgs/)
⇒SGH研究開発は終了しましたが、SSH研究開発で生徒が取り上げるテーマとアプローチには、SDG’sで取り上げられている本質的な考察が必要だと改めて感じました。
⇒17のゴールの底辺に存在する精神や使命を考察するために哲学的アプローチがほしいと考えていました。それがウィトゲンシュタインの「ラスト・ライティングス」(後述)のような考察手法(哲学)を学ぶきっかけとなりました。
4 研究開発のこれからの方向性を考えるための、頭の柔軟体操と思考のトレーニングのための読書。
4 研究開発のこれからの方向性を考えるための、頭の柔軟体操と思考のトレーニングのための読書。 |
①コミュニケーション的行為の理論、ハーバーマス、(上・河上ら訳)、(中・岩倉ら訳)、(下・丸山ら訳)
②ディスタンクシオン・社会的判断力批判Ⅰ,Ⅱ、ピエール・プルデュー、石井訳
③崇高の分析論、リオタール、星野太訳、カントの判断力批判の講義録です。
④純粋理性批判、御子柴善之、日本カント協会会長が純粋理性批判を開設。
⇒①は、かなりしんどいです。1985-1987年の著作ですが、様々な思想家・哲学者の主張を分かりやすく比較・整理し、議論をまとめながら、論を展開しています。SSHでもコミュニケーションが取り上げられていますが、コミュニケーション的行為の本質を考察する手がかりを与えてくれそうです。この本は、ヘーゲルの精神現象学(後述)を読んでいて、その関連文献として読んだものです。中巻p.301の「第三節 聖なるものの言語化の合理的構造」を引用します。
『今やわれわれは、コミュニケイション的行為が、一方での社会的連帯のための儀礼によって育成された基礎と、他方での妥当する規範及び人格の同一性とのあいだを、どのように媒介するのか、という問いをもう一度とり上げることができる。
われれは一方では、記号(シソボル)に媒介された相互行為から規範に導かれた相互行為へと至る発達路線を系統発生のレベルで追跡できるようにするために、道徳的権威の聖なる基礎を考察してきた。
他方、われわれはまた、聖なるものに根ざし規範の妥当性のうちにもやはり、象徴(シンボル)に媒介された相互行為から言語へと発達するための結節点を発見した。』
⇒②は、個人の文化(人格や価値観、趣味や教養など)が階級に大きく依存していることを実証的に解説している本です。レベラルについて考えていた時に気づかなかったのですが、社会的判断力が生育環境や所属する階級に依存していることを認めると、学校教育でリベラルな資質を身に着けさせることが困難だとなりかねないので、SGH研究開発で育成する資質・能力の議論に大きな影響を与えかねません。
⇒上記②に触発され、③④のカントの哲学の講義録と新解説を読んでみました。著名な哲学者が、ほかの哲学者の哲学を講義した講義録は大変興味深く、大学生になって哲学の講義を聞いているような気分です。大学生のときはよく分かりませんでしたが・・。このような見方や説明の仕方もあるんだなと感心します。九鬼周造の「現代フランス哲学講義」、「講義ハイデッガーの現象学的存在論」などをみると、いきの構造よりもはるかに偉大さを感じます。
5 ウィトゲンシュタインにはまってしまいました。 |
①哲学探究、ウィトゲンシュタイン、鬼界彰夫訳、2020年に翻訳出版。 ウィトゲンシュタインの遺構。
②ラスト・ライティングス、ウィトゲンシュタイン(1951年没)、古田徹也訳、2016年に翻訳出版
③論理哲学論考、ウィトゲンシュタイン、野矢茂樹訳、岩波文庫
④論理哲学論考、ヴィトゲンシュタイン、丘沢静也訳、光文社文庫
ここ10年ほど、「哲学は混迷の現代に何ら貢献していない」と考えてきましたが、ふとしたことから、20世紀のスーパースターであることを聞きつけ、その著作を読みはまってしまいました。頭がとても整理されるようになってきました。
⇒ ①はウィトゲンシュタイン後期の大著です。探究型学習などど安易に”探究”という語を使っていますが、探究という営みがどのようなものであるか、興味があって読みました。目を通したレベルですが・・・。冒険にも似た読書に挑戦することも、あらたな発見につながるかもしれません。
⇒②:大学時代にこの本に出会っていれば、哲学的思考(思索)の方法がよくわかり、その後、思考を深めるのに苦労しなかったと思いました。
私の考えるリベラルな思考方法と共通な部分がたくさんあると感じました。哲学者のひとりごとを書き綴ったような本です。
⇒論理哲学論考を③と④の2つの訳で読んでみました。 ウィトゲンシュタイン前期の著作です。論理哲学という哲学を知らなかったのでどのようなものか読んでみましたが、大間違いでした。ドイツ語でLogisch-Philosophische Abhandlung とあるので、論理的・哲学的な論考と訳すことができ、ウィトゲンシュタインの論考の本と理解すべきでした。
④の翻訳者は”ヴィトゲン”と”ヴィ”の表記にしています。ドイツ語読みは”ヴィ”が正しいと思いますが、初版が英語だったため、英語発音になったものと思います。わたしは”ヴィ”の発音採用です。ドイツ語本の記述が精緻(本人がそのようにしたと考えられます。やっぱり哲学は英語表記では不完全なのでしょう)なので、キーワードと概念はドイツ語表記で意味を確認したいと考えています。
6 Yale大学の”若い読者のための・・・”シリーズはすばらしい。
6 Yale大学の”若い読者のための・・・”シリーズはすばらしい。 |
①若い読者のための考古学史、ブライアン・フェイガン
② 〃 哲学史、ナイジェル・ウオーバートン
③ 〃 宗教史、リチャード・ホロウェイ
④ 〃 科学史、ウィリアム・F・バイナム
⑤ 〃 アメリカ史、ジェームズ・ウェスト・デイビッドソン
⑥ 〃 文学史、ジョン・サザーランド
⇒本の存在は知っていましたが、偶然、図書館で見つけ、考古学史のアイスマン発見の部分が目に留まり、考古学の最新テクノロジーの威力に脱帽しました。2021年正月~約1か月のコロナ対応期間に読書。様々な歴史をこのように面白く、興味深く書くことができるエール大学の方々のすごさに驚きました。とても読みやすく、生徒におすすめのシリーズです。
7 SGHの会議で”地政学リスク”の定義が議論になり図書館で本を借りて読んでみました。
7 SGHの会議で”地政学リスク”の定義が議論になり図書館で本を借りて読んでみました。 |
①現代の地政学、2016.11月
②石油の地政学、2016.11月
③地政学の逆襲、2017.7月
④恐怖の地政学、2018.6月、
⑤地政学入門、2019.7月
⑥地政学の授業、2019.7月
⑦学べ地政学、2019.7月
⑧地政学の基本、2019.7月
⓽マッキンダーの地政学、2019.7月
⓾東アジアの地政学、2019.8月
⇒こんなにもたくさんの本が、市の図書館にあるとは知りませんでした。それぞれの著者が自分の見解を述べているような感じでした。
全体像を見たい場合はwikipediaが参考(調査の手がかり)になります。
日本語 ⇒ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%94%BF%E5%AD%A6
英語 ⇒ https://en.wikipedia.org/wiki/Geopolitics
8 最も長く購読している雑誌・日経BPから未来情報の紹介(1987年から購読)
8 最も長く購読している雑誌・日経BPから未来情報の紹介(1987年から購読) |
⇒今後の科学技術の動向を考える上で、またSSH/SGHの会◇「日経BP戦略」は、戦略立案の基礎となる調査・分析レポートのカタログです。
科学技術教育の方向を検討する上で、このような情報は役に立ちます。
運営指導委員会での発言の根拠にもなっています。
以下の項目が取り上げられています。
OneDriveにpdf版(研究資料としての複製です)をアップしましたが、QRコード表も参照ください。
・製造業DX調査レポート
・SIビジネス未来戦略 ポストコロナ編
・金融DX戦略レポート
・次世代Al戦略2025
・テクノロジー・ロードマップ2021-2030全産業編
・世界水素ビジネス全体動向編
・DXサーベイ2
・IoTセンサー未来戦略
・デジタルヘルス未来戦略 ウィズコロナ編
・次世代技術インパクト101
・「望ましい未来」をつくる技術戦略
・マーケティングDX最新戦略
・スポーツビジネスの未来2021-2030
・再生医療ビジネス/テクノロジー総覧
・建設テック未来戦略
・5Gエコノミー世界総覧
・IoTビジネス未来戦略
・テスラ「モデル3/モデルS」徹底分解
【全体編】
【ECU編】
【電池編】
【インバーター/モーター編】
◇「日経BP未来」は、未来テクノロジーのロードマップや技術トレンドをまとめたカタログです。 |
これもOneDriveにpdf版(研究資料としての複製です)とQRコード表をアップしてあります。
内容は以下の項目に分類されています。詳細はQRコード表を見てください。
特に、テクノロジー・ロードマップは、それぞれの技術ごとに具体的に詳細にまとめられています。
これからの技術をスコープする上で参考になると思います。
またメガトレンドのP.23の「10年後の社会と全産業分野の未来像を提示する」は、学校教育として今後どのように対応していけばよいのか、衝撃を受けます。
・テクノロジー・ロードマップ
・メガトレンド
・リーディングエッジ/未来技術展望
・未来市場/未来展望
◇この項のまとめコ議で意見を述べる上での発言の根拠のひとつになっています。
目次だけでも眼を通しておくと、昨年から1年間の変化(年報になっていますので)と今後の市場と技術動向がスコープできます。
⇒デジタル版があるのにわざわざ雑誌版を購読する理由。
好みもあると思いますが、私の場合は情報収集に目的があり、特定課題の調べ学習ではないからです。
webは検索には便利ですが、未知のものは調べようがなく(シソーラスもそんなにいいとは思わない)、本屋をぶらり歩いて、その後の価値観や生き方を変えることになる本との感動的な出会いのような、情報との出会いは望むべくもないからです。
どんな著作物にも、哲学や編集方針があり、情報がそれにより取捨選択・編集されますので、その楽しみもあります。
コメント |
⇒「探究型学習」などと、学習形態に焦点をあてた教育方針は、ICTに代表される科学技術の進展の速さから見て、早晩、陳腐化することになりそうです。
それは、学習内容(例えば学問的知見)にポイントを当てず、学習の方法とその形態に着目した学習のように見えるからです。
例えば、 探究型学習内容、 探究型学習方法、 探究型学習形態のように分けて考えてみると、「探究型学習」の性格がよく分かります。
やはり、SSH研究開発で検討されたように、真摯に科学技術に関する考察を深め、教育内容の構造化とカリキュラム作りの実践が行われる必要があると考えます。
それは、学校教育では、学習内容と学習方法と学習形態はそれぞれ区別されて扱われる必要があると考えるからです。
学習指導要領がそのような記述になっています。
学習形態は、本来、教員にゆだねる性格のもので、これまで記述されたり、指定されたりすることはありませんでした。
SSHの例でいえば、「課題研究」は、学習内容よりも学習形態にその特徴がありますので、「STEM課題研究」は、学習形態から見ると従来の「課題研究」と同じです。
違いは、学習内容と学習方法にありますが、運営指導委員会でたびたび指摘されているように、学習内容(この場合は特に学習の領域とその構造)が不明確(各科目の学習内容とSTEMの学習内容での役割分担と知の統合)であることです。
「STEM課題研究」では、このことの記述の追加と修正が必要と思います。
科学技術教育の構造化とカリキュラムについては、「私のweb閲覧」の中で、「MITのカリキュラムに学ぶ(仮題)」で紹介しながらコメントを述べます。
※以下、続きます。
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その後東工大附属高研究開発が終了したため、この連続掲載記事は終了しました。これに続く「MITのカリキュラムに学ぶ(仮題)」の紹介は本ホームページの「シリーズ3 驚きのWEB・世界の大学編」で具体的に取り上げる予定です。